枯れ木のように渇いた背中。
昔は見上げるように高く、俺の何もかも全部包み込むくらい大きかったのに。
今はもう、俺が父さんを見下ろしている。
当てのない水を求めて、砂を掘り続ける毎日。
あんなに痩せこけて、ふらふらになって…。
砂の中に埋もれてしまいそうだ。
掘っても掘っても水は出てこない。かろうじて穴を掘り進め、広げたとしても。掘った先から砂嵐に呑まれ、労苦は徒労に終わる。
何度も、何度も、何度でも…。
それでも、まだ信じている。
ユバを。
オアシスを。
国王を…。

俺も信じていた。
あの人はそんな人じゃない。
俺達の思いを知ったら、きっと目を覚ましてくれる。


「…この国は好きか?」
「…うん。生まれた国だ」
「私もだ」


…同じ思いで笑っていると感じた。
あの時に信じた。
この人が「国王」だと。
この国を治めるにたる人物だと。
信じるのではなかった。
あの男は、あの時も村を救ってはくれなかった。
変わってしまったわけではなく。
あの答えは嘘だったのだ。
胸に渦巻いていた自問自答は、今や明確な答えを得た。
…もはや、嘘も偽りもどうでもいい事だ。
ハラは決まった。
希望は…、あんたに賭けていた僅かな望みは、自らの手で粉々に打ち砕いてくれた。
あの男が王であってはならない。
この国を救うためには、あの男を倒さなければならない。
父さんは騙されているんだ。
戦いが終わったら、伝えに行こう。
もう、掘る必要はないのだと。
信じることは間違いなのだと。
オアシスはとうの昔に涸れてしまったのだ。
渇ききったこの国に、かつての潤いと安穏を。
武器にも人にも不足はない。
俺はあの男を倒し、国王という地位から引きずり下ろそう。
彼女は悲しむだろう、泣くだろう…が、仕方がないんだ。
幸い、今は消息不明で王宮にはいないようだ。
巻き込まれる事はないだろう。
全ては国のため。
彼女はきっと分かってくれる。
いや、分かってくれなくても、あの男だけは許せない。
国民を、父さんを、俺の信頼を踏みにじって、尚、頂点に立つあの男。


「イカレちまった…」


奴を倒して、俺はこの国を、この渇きを癒す。
そのために、多くの血を流す覚悟は出来た。


「これが最後の戦いだ!」


あの男に、全てをあがなってもらおう。


「王女と海賊」のアリノリ様のフリーSS。
コーザの決意が……痛々しく悲壮で見ていられないです……
三作セットで戴いています。
ビビ:「震え」 トト:「希み」
お勧めです。是非読んで!



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