砂漠に立って一人。
遠くに巻き起こる砂煙の到来を待っている。
自然の現象ではない。怒れる人々の巻き起こす砂塵の嵐だ。
彼らは知らない。
このまま進めば、国は滅びてしまうことを。自ら国を滅ぼそうとしていることを。
だけど、知らない事が悪いのではない。
悪いのはあの男だ。
この国を手に入れようと、全ての画策を巡らせた悪辣な海賊。
…情けないのは私達。
まんまと罠に嵌ってしまった。
国を守るのは、そもそも王家の勤めである。
なのに、国民を飢えさせ…、死なせ…、反乱にまで追い詰めた。
もう、何人も死んでいるのだ。
反乱が起こる度に、国王軍は反乱軍と戦った。
初めのうちは掃討戦。
それは降り掛かる火の粉を払うような戦い。
それが今や戦力差は歴然としていて、国王軍の負けは必至。
反乱軍は烏合の衆ではないのだ。
元国王軍の兵士が30万人もいて、核にはリーダー…。コーザがいる。
今、反乱軍を止めようとする私にとって彼がリーダーであることは、幸い…だけど、国王軍にとっては、最悪だ。
彼には資質がある。
人々を引き付け、奮い立たせるリーダーに相応しい人だ。
彼が反乱軍のリーダーとなったという情報を得た時は、かなりのショックを受けた。…が、どこかで納得している自分もいた。
…彼ならやるだろう、彼なら出来るだろう、と。
彼は優しいから、国が好きだから…。
この現状を憂いて、悲しんで、それで、散々悩んで、どうにかしたくて立ったに違いない。
自ら傷を負う「覚悟」を決めて。

だけど、リーダー。
それでは国は救えないの。

地面がひどく揺れるわ。
砂煙もあんなに大きく近付いて。
見えないけれど、先頭を走っているのがきっとそう。
私を庇ってくれた時のように、反乱軍を、今の仲間を自分の背中で守っているのね。

…皆は大丈夫だろうか?
私の身替わりになってくれた海賊達は。
彼らもきっと戦っている。
無事でいてね。
きっときっと反乱は止めるから。
そうして、国が平和になったなら…。



「止まりなさい!反乱軍!」



私は胸を張って言うわ。
あなたたちの仲間だって。


「王女と海賊」のアリノリ様のフリーSS。
静かな覚悟を決めたビビの姿勢が美しいです。
三作セットで戴いています。
コーザ:「渇き」 トト:「希み」
お勧めです。是非読んで!



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